KERA CROSS グッドバイ 備忘録

2020.2.9(日)、初演から1ヶ月ほど遅れをとりつつも、シアタークリエにてグッドバイを観劇してきました。


まずは、グッドバイ観劇に至るまでの私の感情の起伏を振り返ってみます。


 

 初日観劇者よりこのような情報が届き、歓喜に満ち溢れています。このとき私の頭の中では歓びの歌が流れていました。



清川くん履修者が増えてきたことに焦りを覚え始めます。



そんな中でも愛知公演は我慢しました(金欠)、えらいぞ私。



公式からの有難い供給があり、さらにモチベが上がり始めます。



そしてようやく観劇当日の朝。



清川くんの修造要素の有無を確認した後いざ観劇。そして観劇後の感想。



ネタバレになってしまうといけないと思い、この一言のみでした。シュール。

 


ここから感想です。とてつもなく長くて申し訳ないです。

 

 

 

幕の柄が原稿用紙で「うお〜なんか凝ってる…」と3人で感動しながら席につき、「原稿用紙に文字映し出す感じ?」「それは文スト感がすごい…」とかわちゃわちゃ話しながら開演待ち。

LLLのコスタードに慣れすぎてしまったためか、なかなか入らないアナウンスにそわそわしていたら、まさかのクリエの男性スタッフの肉声アナウンスにじわじわ…。双眼鏡のピント合わせをその男性スタッフの方に焦点を合わせて済ませてまたじわじわ…していたら開演。


まさかのステージ2段編成で、幕が左右に開いた瞬間2段目にキャスト勢ぞろい、誰かのお葬式のシーン。自由くんを生瀬さんの肩越しに発見。髪の毛ぴっちり七三坊や。生瀬さんが遺影を見ながら「真面目な顔してるけどさ、目がスケベだ!」と言った瞬間自由くん「えぇ?」みたいに眉間しわ寄せて生瀬さんの背後から一生懸命遺影覗こうとキョロキョロ。再び生瀬さん、藤木さんに「女は幾人いるんだ!」と大声で話しかけた瞬間の自由くん、またさっきの顔で藤木さんと生瀬さん交互にキョロキョロ。直後にりんがタイミングよくチーンと鳴ってみんな一斉に合掌。切り替えの早さが面白くてどっと笑いが湧く会場。

雨が降ってきて藤木さんと生瀬さんが下のステージへ降りて来る前に、傘をさした自由くんが1人で下手からフラフラ歩いてきてまたもやキョロキョロしたと思いきや、その他特になんのアクションもなく上手へ去っていった。なんの演出だったのだろう…通行人A的な役回りかな…ちょっと面白かった…。


20人ほどいる愛人を整理したいという田島の相談を受ける連行先生。困り果てて眼鏡を外してハンカチを取り出し顔を拭き始める田島。連行先生に「泣いてんのか?!」と聞かれて「いえ、雨で眼鏡が…」と反論するも「じゃあ顔じゃなく眼鏡拭けよ!」とツッコむ連行先生がツボだった。あと、「お前、入水自殺だけはダメだぞ!入水自殺だけは…!」と入水自殺推しの連行先生もツボだった。


場面は変わり食堂でご飯をかっ食らうキヌ子。トイレにいる田島に向かって大声で「たーじまさーーーん!!!」と叫ぶがなり声とその声量のインパクトがすごすぎて思わず笑ってしまった。もう充分食べているはずなのに「きんとんできないかしら?」と店員に尋ねるキヌ子。愛知公演では「小倉トーストできないかしら?」だったらしい。ご当地ネタ嬉しいね。

喋ってる間もどんどん白米を口に詰め込んでいくキヌ子。喉につまらせやしないかとヒヤヒヤしたけど、リスのようにうまいこと頬にご飯を溜め込んで時々水を含みながらつっかえることなく喋り続けていて、プロだ…と感動。「腹水の陣だね」と言うキヌ子に「腹水…?背水の陣だろ!?君はバカだなぁ〜…」と呆れる田島。これからどうなることやらという田島の表情と、キヌ子の、はいはいバカですよでもそんなバカにお願いをしているのはあなたですよね、という余裕のあるとぼけた表情が、これから始まる物語の波瀾万丈さを物語っていてワクワクした。


背水の陣のくだりの直後音楽が流れ始め、食堂の障子が閉まる。前奏が終わりまた障子が開いたときには、すでに立ち上がって歌い始めている田島とキヌ子の姿。サイドにキャストの名前が書かれた垂れ幕が現れ、すごく素敵な演出!と感動。ヴァイオリンの生演奏に乗り、ステージのあちこちから続々と歌いながら現れる登場人物たち。「巡り会ってしまった怒り分かち合いましょう」のハモリが綺麗すぎて感動していたら、上手から突然清川くん登場。座席が上手だったため突如目の前に現れた清川くんにびっくり。垂れ幕は持参してきた…?よく見てなかった…。そして間奏中なので歌わぬ清川。電気が流れるような効果音に乗せ、何人かと手を繋ぎ、ビリビリと感電してびくびく痺れている動きと苦しそうな表情をしていた。これから清川くんの身に何が起きるの…と少し不安になった。感電したあとは髪型を両手で整え、ちらりと下手側を一瞥し垂れ幕を持参しまた上手のステージ袖に戻っていった。下手側に何かあるのか…?と思い見てみるも、特に何も無かった。

垂れ幕だけではなく、1人が2人の着物の帯を引っ張り名前が現れる演出(MIOさんYAEさん)や、障子を開けたら天井から名前がぶら下がっている演出(生瀬さん)、背中に名前を担いでいる演出(杉田さん)など、様々な演出でキャストが登場し、すごくわくわくした。

結局歌ったのは田島の愛人4名と奥さんの計5名のみ、だった気がする…。唯一聞き取れた「巡り逢ってしまった怒り分かち合いましょう」「愛してしまった傷はどこに行くのか」という歌詞から、田島に巡り逢って“しまった”、愛して“しまった”、後悔や怒りや傷つけられた様々な思いがそれぞれの女たちにはあり、その怒りや傷がどのような形になって劇中現れてくるのかドキドキハラハラしながら、今後の展開に高揚感を覚えた。


歌が終わり、デパートの美容室に訪れる田島とキヌ子。そこには美容師として働く田島の愛人の1人、青木が、全てを察したような表情で立ち尽くしていた。田島に言われたとおり微笑んでニコニコしているだけと思っていたキヌ子が、突然「アハハハハ!!!」と大口を開けてまたもやとんでもない声量で笑い始めたときは、驚いて肩が上がった。何を言われてもこのような笑いを繰り返すキヌ子。壊れたおもちゃのようで少し怖かった…。

キヌ子の髪の毛を梳かしながら、サイレンのような癖のある泣き声で泣き始める青木。それに呼応するようにまた「アハハハハ!!!」と笑い始めるキヌ子。カオス。とても仕事になるような雰囲気ではなく、田島は青木に駆け寄り、お金を握らせ一言、「グッドバイ」と言い残し、キヌ子を連れ美容室を立ち去る。

デパートでキヌ子と歩きながら、青木がいかに良い人だったか語る田島と、「あ〜しゃしゃしゃ…」と動物と戯れるムツゴロウのような相槌を打つキヌ子。相変わらず温度差がすごい。落ち込む田島にお構いなく、高級店でバッグやブローチをたかるキヌ子。それでも仕方ないといったように買ってあげる田島の財力。普段いくら持ち歩いてるんだ…。


連行先生に「青木さんこそ僕にぴったりの女性だった」と未練がましく語る田島。まだ1人目なのに…と思っていたら「まだ1人目じゃないか!」と連行先生が私の気持ちを代弁して言ってくれた。

なんやかんや連行先生に励まされ、「青木さんなんて最初からいなかったんだ!」と前向きになる田島。青木さん可哀想…。そしてなぜかキヌ子をモノにしろと強く推してくる連行先生。腑に落ちない感じを漂わせながらも、言われたとおりピーナツとウイスキーを手土産にキヌ子の家を訪れる田島。素直だね。


担ぎ屋のみすぼらしい服で、狭く汚い部屋に住んでいたキヌ子。田島を渋々招き入れ、埃を巻き上げながら叩いた座布団を田島に手渡す。担ぎ屋として商売のため調達してあったであろうカラスミを田島に勧めるキヌ子…だがやはりタダでとは言わない。またもお金をせびるキヌ子に「お前みたいな恥知らずを産んだ親の顔が見て見たい」と呟く田島の発言に対し、カラスミを切る手を止め、表情を曇らせ「私だって見て見たいわ、そしてぶってやりたい」と吐き捨てるキヌ子。捨て子だったんだね…。いつの間にか部屋の外から聞こえてきていたショパンノクターンが、せつない気持ちを助長さているようで、ちょっとしんみり…。

そんな雰囲気をぶち壊すように、カラスミを勢い良く机に置き、サービスだと言って味の素をこれでもかというほどぶっかけるキヌ子。ワイルド…。料理はめんどくさいからしないだけだし、どちらかと言うと綺麗好きな方と語るキヌ子に、疑いの眼差しを向ける田島。確かにここまでの言動を振り返ると信じられない。私も同じような眼差しでキヌ子を見てしまった。

ウイスキーを飲みすぎて酔っ払った振りをして部屋に泊めてほしいと横になる田島を、ものすごい勢いで引っ張りあげ、冗談じゃないと怒るキヌ子。「キヌ子ぉ…」と甘い声で懇願する田島に「呼び捨てにすんな!」とピシャリと言い放つも、玄関で「好きだ…」と言われ抱擁され戸惑う表情のキヌ子。一瞬の間が空き、あれ、キヌ子ももしかして…?と思った途端田島の耳を引っつかみ外へ引っ張り出し、蹴るわ殴るわ飛び蹴りするわの猛攻撃。こんな攻撃をされてもなお「すまないが、僕の眼鏡と靴を…」と話しかける田島に眼鏡と靴を投げ捨てるキヌ子。扉に向かって「ありがとう」としっかり頭を下げる田島は、礼儀正しいというかなんというか…。このシーンで特に、田島に対し、愛人は作りまくる癖に変に素直でちゃんとしたところがある人物、という印象を受けた。


場面は変わりオベリスク編集部。事務員や社員が雑談している中突然大きな足音を立てながら、「戻りました!伊達先生の玉稿、拝受しました!!!」と上手側から駆け込んできた清川。「拝受してきました!!!」のとき卒業証書授与かってくらい直角に腰曲げてお尻を突き出してきていてもうすでに面白い。「原稿」ではなく「玉稿」という表現をする点からは、相手を敬う真面目な好青年といった清川の人物像が伺えた。そして「編集長、病院まだ終わらないんですかねぇ…」とやってきて早々田島の帰りを心配する清川。真面目な上に他人想いで良い奴だな…。

直後に頭に包帯を巻き、新調した眼鏡をかけた田島が登場。怪我の心配よりも新調した眼鏡について褒めてもらいたかったらしく、アピールしてくる田島に対し、「前の方が似合ってましたよ!」「前の方が段違いに似合ってました!」と空気の読めない発言をかます清川。他の社員のドン引いた表情に気づきなさい。「僕も似合わないと思ったんだが、眼鏡屋が勧めてくるから…」と苦笑いの田島に対し「だ〜い失敗ですよ!」と屈託のない笑顔でトドメを刺す清川。発言に裏がなく、悪気がないところが厄介。座り方も、足をつける!お尻を乗せる!腰骨を立て背筋を伸ばす!ペンを持つ!書く!というように、一つ一つの動きがハッキリしていて、いや、しすぎていて本当に面白かった。

コソコソ隠れ社内恋愛を楽しむほかの社員に対して見向きもせず、引き続きものすごく良い姿勢で机に向かって書き物をする清川。途中、シャツの袖を几帳面に丁寧に捲り、再び机に向かう動きもあり、手元の作業に没頭している様子が伺えた。そんな清川に、「あいつら給湯室でキッスしてたんだぜ」とニマニマしながら伝える田島に対し、書き物に目を落としたまま「そうなんですか」と棒読みで空返事をする清川。他人の色恋沙汰になんか興味無い!仕事が全て!というモーレツ社員ぶり。ああ、コイツにはこういうこと話しても無駄か…と苦笑いする田島にお構いなく、少しの沈黙のあと突然「田島さん!!!来月号、ヘレン・ケラーの特集を組みませんか!!!」と顔を上げ、大声で提案する清川。やはりなにも聞いていなかった。

提案が採用されると「ありがとうございますっ!!!」と「ございますっ!!!」に向かってクレッシェンド気味にボリュームアップし元気に返事をする清川。直後電話が鳴り、そのクレッシェンドの勢いのまま「電話だっ!!!!!!」と大声を張り上げ電話を取る。面白すぎる。電話の主はキヌ子だったため田島に代わる。清川がいるためキヌ子のことを「先生」、謝礼金のことを「資金運用」、愛人のことを「企画」と言い換え話す田島。「1企画につき〇円…いや、〇円!」とセリのように上昇していく謝礼金の交渉は、傍から見ると、どこかの出版社や企業家からの要望に苦戦している編集者の姿。そのため清川は気が気ではないといった様子で田島を心配そうに見つめる…だけでは留まらず、「僕が代わります!!!」と鼻息荒く捲し立て、田島から電話を奪い取る。「もしもし…オベリスクはこのままいきますよ…」と静かに語り始めたと思いきや「出版自由化がなんだーーーー!!!」と突然大声で叫び出す清川。電話口でそんな大声出さないで…。

その後もなにか捲し立てるがすでに切れてしまっていた電話に対し、「かけ直しましょう!!!」と電話と同じ目線に屈み込み、今にも走り出しそうな勢いのポーズの清川を宥める田島。しかしなにかのスイッチが入ってしまったのか清川の暴走は止まらない。会社が乗っ取られるとすっかり思い込んでいる清川は、またもや鼻息荒く早口で色々捲し立てながら、ドタバタと騒がしいタップダンスをするかの如くステップを踏み机や椅子の間を移動し、田島の元へ駆け寄り、「誇りを持ちましょう!月刊オベリスク!!!」と叫ぶ。あまりの激しさに笑いやどよめきが広がる会場。そしてまたドタバタと忙しなく元来た道を、今度は机にうつ伏せにダイブしながら泳ぐように戻り、ジャケットを着たと思いきやまた脱ぐという謎のアクションを起こしながら再び田島の元へ駆け寄り、「編集者としてのッ…編集部員としての誇りをッ…月刊ッ!オーーーーベリスクッ!!!」と右手を天井に掲げながら叫び、直後からは半分涙声で「田島さん…いや……田島さん編集長……」と弱々しく田島に近づく清川の額の汗を拭う田島。「オベリスクのためならなんでも出来ます」といったニュアンスのセリフを並べ立てながら田島を見つめる清川から、これまでの激しい言動も含め、オベリスクと田島に対する愛と情熱がひしひしと伝わってきた。

田島が優しく微笑みながら「オベリスクは大丈夫だよ、約束だ、俺がなんとかする」と宥めると「本当ですか…約束ですよ…?やっぱすごいなぁ〜編集長は!!」と途端に目を輝かせる清川。そしてそのまま田島の両手を包み込み、「尊敬しています!ギューーーーー!!!!」と、痛がる田島を無視し固い握手を交わす。「痛いよ!」と声を上げる田島よりさらに数倍の声量で「すみません!!!!」と謝り、またドタバタ、キュッキュッと靴音を鳴らし机と椅子の間を縫いながら移動し、「よぉ〜し、働くぞーーーー!!!」と叫びながら気合いを入れ直す熱血モーレツ社員清川くん。

とにかく清川の動きが激しすぎて、最初は笑って見ていたけれど途中から本当に清川くんのことが心配になってしまい、机にダイブした瞬間は思わず「えぇ……?」と声が漏れてしまった。予告編の映像でもその熱血ぶりは垣間見えていたが、想像の数倍激しく体を張った自由くんの生の演技と熱量に圧倒されてしまった。お疲れ様と拍手を送りたい。

ちなみに、清川くんが叫んでいた「出版自由化」について後で調べてみたところ、敗戦後の占領軍GHQによる出版統制解除の指令により実現した出版業の自由化のことで、これにより空前の出版ブームが起き、この時代は純文学雑誌が唯一黒字だったらしい。へえ〜。戦争が終わりみんな娯楽を求めていた時代、今よりも娯楽と呼べるものがまだまだ少なかった時代、テレビやラジオといった高価な娯楽品に対し、比較的安価に手に入る雑誌が沢山売れたんだろうなぁ…。つまり清川くんは、出版自由化により巻き起こった出版ブームの中でも、簡単に儲け話に乗ることなく、社風や出版誌のスタイルを尊敬し守り抜き、誇りを持ち続けていきましょう!ということが言いたかったんだなぁきっと。大きな出版社の傘下に入ってしまえば今よりもっと懐は潤うだろうし、変な話、どんなものを出版してもそこそこ売れる時代であったであろうに、長いものに巻かれず、オベリスクのスタイルを守り抜こうとする清川くんの芯のある従順で真面目な姿勢が、時代背景を含め、ありありと感じられたシーンだった。


暗転し場面が変わり、2段目のステージへと続く移動階段が上手から出現。階段を引っ張り手繰り寄せるアクションを起こす清川。暗闇の中でも圧倒的な存在感。階段が止まり、ブレーキがきちんとかかっているか、指差し確認でチェックした後、ようやく舞台から去っていった清川。安全管理まで…お疲れ様でした…。

2人目の愛人である、オベリスクの挿絵を描いてもらっている水原先生の元へ向かう田島とキヌ子。水原にはシベリア帰りの少し粗暴な兄がおり、もしも危険な動きをしたら守って欲しいと頼み込む田島に、情けないと呆れるキヌ子。玄関を開けると髭を生やし兄だと言い張る小さな子どもが現れ、「児童劇団の子かな?」と混乱する田島とキヌ子。部屋に上げてもらい、体調が優れないのか、布団で横になっている水原に「ケイ子!起きろ!」と叫ぶ子ども。すると続けて「ケイ子!起きろ!」「ケイ子!起きろ!」と全く同じ風貌をした子どもがさらに2人床下から現れ、どよめく会場。水原の顔に白布をかけ、りんを鳴らし「なーむなむなむ」とお葬式ごっこを始める子どもたちとそれを止めようとする田島の騒がしい様子に気づきようやく目を覚まし起き上がる水原。寝起き早々子どもたちを怒鳴りつけ、田島に近所の3つ子だと話す。ようやく静かになった部屋で、甘えた様子で田島に抱きつこうとする水原の目にキヌ子が写り込み、動きが止まる。キヌ子に礼儀正しく挨拶をする水原に対し、なんとも思わないのかと尋ねる田島だったが、「なんとも思わないなけないじゃない、とっても嬉しいわ」と、思ってもないことを悲しそうな声と表情で話す水原。せつない…。

例のシベリア帰りの兄が帰ってきて、下の階に住む、最近男性に振られ情緒不安定な女性を励ましてきたと話す。その女性というのは、田島が別れを告げた美容師の青木さんだった。それに気づいたキヌ子は2人の会話に入り込み、「青木さん」と人名を口に出してしまい、なぜ名前を知っているのかと妙な空気になる。お茶を淹れるため水原は席を外し、兄が、どうかこれからも奥さんと妹を、2人まとめてよろしく頼むと頭を下げる。またもやキヌ子が「2人どころじゃありませんよ…!」と余計な口を挟み、慌てて帰る2人。

喋らないという約束を破ったキヌ子を叱り、次はこんなことをしないようにと釘を刺し、失敗した場合は報酬は出ないから今回の報酬は無いと告げるが、キヌ子に胸倉を掴まれ脅され、結局報酬を支払う情けない田島。1人でご飯を食べて帰れとキヌ子に言い残し去ろうとすると3つ子が現れ、青木が田島を待っている、行かないと水原の兄である健ちゃん(健一)に取られるよと伝えるが、行かないと決意し立ち去る田島、美味しそうな猫を追いかける3つ子、食堂へ向かうキヌ子、それぞれ別々の道へ去っていった。


食堂で雑談をする清川と連行先生。田島が闇取引から足を洗ったと告げる清川に対し、「知ってたのか!?」と驚く連行先生。私も驚いた。闇取引なんか絶対に認めなさそうなのに…。清川が言うには、闇取引の噂は社内で蔓延しており、知りたくないのに耳に入ってきてしまうとのこと。やはり闇取引に対しては良く思っていない様子だが、足を洗ってくれたことにほっとした様子も見られた。店員に「はじめまして!清川です!!」と元気に挨拶する清川に対し、「堅物なんだ」と紹介する連行先生。アダルトな雑誌を社会勉強だと勧めるも興味無いと一蹴されてしまう。本当に堅物だな…。

部屋の奥で物凄い量の食べ物を注文し食べているキヌ子を発見し、驚く3人。キヌ子のことをめちゃくちゃガン見する連行先生がツボだった。そしてキヌ子が「田島」というワードに反応することに気づいた清川が、声色を変え「田島ぁ…」と呟くと振り返るキヌ子。2回目も同様の反応。「近い言葉を…」という連行先生の提案を受け、「小島ぁ…」と呟くと一瞬振り返るもまた食事を再開するキヌ子。「え?ジマ?ジマなの?」とコソコソと話しながら混乱する3人。暗転しかけているのにずっと「ジマ?ジマ?」と言い続けていた。シュール。田島に似た言葉はアドリブで、他にも、「野島」「谷間」などがあったらしい。谷間は胸の辺りで谷間を作るジェスチャー付きだったとか…見たかった…円盤に収録されるのはどれなのか、楽しみに待つことにしよう…(できれば谷間がいいです)。


まだ1人としか別れられていないことに頭を抱える田島に対し、一遍に別れることは無いじゃないかとアドバイスをする連行先生。

次回は大櫛という女医の元に行くという田島に、診察してもらいたがる連行先生。どうせ診てもらうなら女性に診てもらいたいという欲望剥き出しの連行先生を、訝しげに見つめる田島。忘れっぽいのか念入りにどこの病院か尋ねる連行先生をあしらう田島の流れで暗転していったが、その直後「暗くなっちゃったよ」とぼそっと呟く連行先生の声が聞こえてきたのが面白すぎてしばらくツボってしまった。絶対生瀬さんのアドリブだ。


田島の家を訪ねるキヌ子だったが、一向に返事が聞こえて来ず、ドアを蹴った途端、郵便配達員が1人でしりとりをしながらやってきて、電報を渡す。「本当に田島さん?」と疑われ、「田島の、家内でございます…」と切り抜けると「ございます…す、す」とまたしりとりを再開しながら去っていく配達員。この配達員もなかなかツボだった。

電報の内容は、愛想が尽きたため今後は仕送り不要、という妻からの伝言だった。その直後田島が帰宅し思わず電報を口に含むキヌ子。2人で部屋に入り準備を始めるが、お隣さんがおいなりさんのお裾分けにやってきた。おいなりさんが入っているであろう袋をめちゃくちゃぶん回しながら「お裾分けです〜!」と叫ぶお隣さんなかなかクレイジーだった。キヌ子が妻として出ていきおいなりさんを半ば強引に受け取り、電報を受け取った振りをして部屋に戻る。おいなりさんは地面に投げ捨てられた。貴重なおいなりさんが…と思っていたら結局お隣さんが拾って帰っていった。

涎まみれのクシャクシャの電報を手渡すと、内容を読んだ田島は途端に腹痛を訴え、そのまま2人で大櫛先生のいる病院に行くことに。


一方病院では、田島たちより一足先に青木と、付き添いの水原健一が大櫛先生に診察を受けていた。頭痛や不眠を訴える青木だったが、原因は、健一に付きまとわれていることではないかと大櫛が指摘すると、冗談やめてくださいよと聞き流す健一。耳に5人の兵隊さんがいるが、この子たちはいても鬱陶しくないから構わないと言う青木に対し、「じゃあ7人で帰ろ!」と提案する健一。大櫛が「6人がいいのよね?」と言うと頷く青木だったが、「じゃあ先生に1人取り出してもらおうよ」と再び提案する健一、スーパーポジティブ。勇気を振り絞り、「もう会いたくないの」と健一にハッキリ告げ、「グッドバイ」と言い残し去っていった青木だったが、前方から歩いてくる田島とキヌ子を発見し、慌てて健一と共に立ち去った。

田島を診察台に寝かせ胃痙攣と診断し、麻酔薬を打ち眠らせる大櫛。キヌ子のことを田島の妻と認識し、手紙の内容は本当かと尋ねるも、話が噛み合わない。終いには、手紙の文面の「曲者」を「まげもの」、「所以」を「ところに」と読んでしまう始末。「日直を、ひじきと読んだ女ですから…」と言うキヌ子だったが、日直をひじきと読む方が難しくないか…?


キヌ子が手紙を読んでいる間、上段の舞台では田島の妻と双子の娘の幸子と福子、そしてなぜか連行先生が一緒におり、「私が新しいお父さんだよ!」と告げる連行先生。え、まさかのそこ…!?驚きを隠せず思わず「え」と声が漏れた。だからあんなにキヌ子をモノにしろと勧めてきたり、一遍に別れることは無いとアドバイスをしてきたりしたのか…全部が腑に落ちた…。


田島とキヌ子の企みに気づいた大櫛先生は、手紙によって番狂わせが生じたこと、また、キヌ子が田島に恋をしてしまったことでさらなる番狂わせが生じてしまったことを指摘したが、頑なに認めないキヌ子。図星をつかれて慌てる様子が可愛らしかった、絶対好きじゃん。

目を覚ました田島に、「グッドバイ」と別れを告げ去る大櫛先生と「ごめんバレた…」と申し訳なさそうに言い残し去るキヌ子。目を覚ましたらとんでもない展開になっていて、田島さん次から次へ災難だな…。


妻からの大櫛先生に宛てた、愛人を幾人もこしらえ愛想が尽きたので、大櫛先生に田島を任せたいという内容の手紙を読み、失意の中フラフラと歩く田島。河原で横になり追い剥ぎに遭い、服を全て取られ、肌シャツと股引のみという恥ずかしい格好になってしまう。しかしそれでもカッコ良い藤木さんって何者。


会社を訪れるとホッとした表情の清川が田島を出迎えた。田島が留守の間、水原がやってきて田島が愛人を殺して食べたというあらぬ噂を吹聴して回っていたことを伝える。殺して食べられた、のくだりで、「いくら田島さんでもそれはないですよ!」と水原を宥める清川だったが、「いくら田島さんでも」ということは、田島が中々とんでもない人間だということに、清川自身も気づいていたということかな…?自分が尊敬する人がそんな人物だと信じたくなくて、闇取引の件も気づいていたけど気づかぬ振りをして、田島を信じ続けていたんだろうなぁ。健気。

「俺はもうダメだ、会社はお前に任せる」と投げやりな田島。「お前に女の話はしてこなかった、お前に話すと後ろめたい気持ちになるからだ」「俺はお前の思っているような人間じゃない」「仕事に打ち込むお前は素晴らしい、だけど!女はもっと素晴らしいんだ!」と捲し立てる田島。女はもっと素晴らしいんだ!のときのポーズが非常口のマークみたいでクスッとしてしまった。水原を説得しに行くという清川を止めようと縋り付く田島のせいで2人して絡まりながら転び、「しっかりしてくださいよ!」と遂にキレる清川。「ヘレン・ケラーの対談はどうするんですか!」と聞くも「どうでもいいんだよ!」と返され、さらに清川の顔が強ばり、田島に背を向け立ち上がり俯く。雨の中肌シャツと股引という惨めな格好で走り去る田島。自分の信じていた、尊敬出来る田島周二の姿は崩れ去り、失望する清川。走り去る田島の背中に向かって「バカヤローーー!!!」と叫ぶ。


担ぎ屋として働くキヌ子の商品から、田島が好きだと言っていた香水や口紅を盗んだ、田島の愛人の1人で未成年の草壁が、警察署で田島の迎えを待っていた。売り言葉に買い言葉で、口論をするキヌ子と草壁。田島が現れたことによりまた激しい口論が繰り広げられるが、田島が化粧品の代金を支払い和解することで解決した。

警察署で書類を書きながら不意に田島が草壁に、「結婚しよう」とプロポーズをする。草壁以上にオーバーリアクションで驚く警官に向かって、席を外してくれないかと頼む田島。「ここどこだと思ってんだよ!」とツッコむ警官が正論すぎたが、賄賂を渡された途端席を外す欲望に忠実な警官だった。結婚して子どもが沢山欲しいと詰め寄る田島だが、牛に踏まれたことがあるため子どもは産めないと悲しそうに伝える草壁。さらにお金で色々解決しようとする田島に対し、お金じゃ人を動かせないと言う草壁だったが、田島は、草壁が百姓の娘だからとどこか下に見たような物言いで詰め寄る。結局草壁に「グッドバイ」と別れを告げられるも、その途端抱き寄せ、「一緒に死のう」と提案する田島だったが、拒否され逃げられてしまう。

結婚しようとか死のうとか、言動が支離滅裂すぎて、田島がいかに追い詰められているかが分かる場面だった。


夜道を、彷徨く浮浪者に無造作にお金を渡しながら、フラフラと覚束無い足取りで進む田島。上手側から自由くんが扮する浮浪者が田島を追いかけるも、結局お金は手渡されなかった。可哀想。

道端の占い師に絶望していることを言い当てられ、驚いて顔を上げる田島。話しているのに尚続くヴァイオリンの演奏に向かって「うるさいよ!もう始まってるよ!」と叫ぶ占い師。改めて、田島に向かい、「だいたいわかるよ〜お兄さんの名前は、だいたい田島周二」と名前を言い当て田島の信頼を得た占い師は、近くに素敵な女性がいるから今すぐ会いに行くべきということや、これから災難が訪れることを占い伝える。

「だいたい」と言いながらも妙に説得力のある占い師の言動が面白かった。私もこの占い師に占って欲しい。


占い師のアドバイス通りキヌ子に会いに急ぐ田島の背後から、帽子を目深に被り、木片を抱えた不審者が忍び寄る。自由くんだった。だから、え、清川くん、憎しみのあまり田島さんを殺そうと…?!と驚いたけど、田島を殴ったあと財布を漁っていたり、意識の無い田島を見て腰を抜かしていたりという反応から、ただの乞食だと理解。田島を引きずりどこかへ連れていく乞食。直後に電車が通り過ぎる音が響き渡りなんだか不穏な気配…。

暗転が解け、オベリスク編集部。電話を手に「本当に田島周二なんですか!?」と物凄い剣幕で叫ぶ清川の姿。グレーのズボンが乞食と同じだった、やっぱり自由くんだ。ラジオからは、マンホールから溺死体が見つかったこと、所持品から田島周二と断定したことを伝えるニュースが流れていた。まだ第2幕もあるのに主人公死…!?と驚いたが、次の場面では頭痛を訴える田島と、それを囲う複数の外国人(音声)が。どうやら記憶を無くしてしまったらしい田島だが、生きていたことに一先ず安心したところで、「1年間の強制労働に処す」という判決がくだり、第1幕は終わった。


第2幕は、田島がいなくなってから1年後という場面設定。何かお祝いの準備でもするのか、花瓶やお酒を運び入れる見慣れた面々。清川くんはレコードを運び入れていた。

小競り合いをする連行夫妻に少し口を挟みながらも、上手側の籐の編み込みチェアに「あ〜」と静かに息を吐きながら深く腰掛け目を瞑りリラックスモードの清川。随分低俗で下品な雑誌になってしまったらしいオベリスクに対し、清川は「ああいう方が売れるんですよ」と吐き捨てる。どうしちゃったの清川くん…あんなに誇りを持って働いていたのに…。喋り方も動きもなんだか高慢ちきで、1幕にいた清川くんとはまるで別人のよう。裸の女性が表紙の雑誌なんか買えないと嘆く大櫛先生に、「じゃあ先生、白衣の下素っ裸でモデルやってくださいよ!」と笑えない下品な冗談を、ユーモアだと言って笑う清川。大櫛先生が「ユーモア!?」と何度も繰り返す様子が面白かった。続けざまに「いっそ特集組みましょう、田島編集長が愛した女たち、田島は夜な夜なこの体たちを貪った!」とまた下品な冗談を重ね、ついには静江に水をかけられ、「……つめてぇな…」と不機嫌になる清川。嗚呼…清川くん自慢(と私が勝手に解釈している)の髪型が乱れた…。こんなこと田島の墓前で言えるのかと詰め寄られるも、清川は「あんなのただの石なんで!」と罰当たりな発言をケロッと言ってのける。とにかく清川くんの変貌ぶりに驚くばかり。


続いて水原兄妹、青木さん、草壁さんがやってくる。仲の良かった水原兄妹は不穏な空気、異常なくらい明るくなった青木さん、妊娠8ヶ月の草壁さん。清川だけでなく、1年間で様々な変化を遂げた登場人物たち。特に、健一のことを「切れかけた電球」「口が臭い」と罵るケイ子の毒舌ぶりがツボだった。「口臭いなぁ!ちゃんと歯ぁ磨いたァ!?」と怒鳴られたり「兄さん口臭い」とボソッと呟かれたり、だんだん健一が可哀想になってきた…。

健一と青木さん、清川とケイ子が恋人同士になっているという事実も判明し、これもまた驚いた。意外な組み合わせ…。


一周忌兼田島周二を偲ぶ会として明るく始まった催し。田島に「一緒に死のう」と言われたというカミングアウトをする草壁の発言を皮切りに、楽しい雰囲気が一転、それぞれがそれぞれの言いたいことを吐き散らし、収集のつかなくなる会場だが、「こんなに言い合える仲は素敵なことよ」と穏やかに纏める静江さんの余裕ぶり。


双子と手を繋ぎながらキヌ子が登場。田島の死後、衝動的に貯金全てをはたいて大きなお墓を立てたらしい。「大きい人だったから、大きい方が良いと思って…」と呟くキヌ子、田島のこと大好きじゃんか…健気で可愛い…。

静江がなにかを言おうと「実はね…」と話し始めたところ、キヌ子と手を繋いでいた双子が「「ビビッときたぁ〜!」」と声を揃えて叫び出す。どうやら緊張して力が入ってしまったらしい。そういえばオープニングで清川くんも誰かと手を繋いで感電したようなアクションをしていたけど、これの伏線…?清川くんもこれから感電する…?と思ったけど結局何も無かった、考えすぎた。

キヌ子のことを「怪力ババア」と罵る草壁と一触即発の雰囲気。そこに「喧嘩はやめましょう!」とぬるっと現れる田島。驚いて気絶し、籐の編み込みチェアに座らされる青木。静江に「イブセマスタロウ」という仮名を与えられていた田島。太宰治の師であり親代わりのような存在である「井伏鱒二」をもじったのかな?ユーモア!田島に一旦部屋に戻ってもらい、状況を説明する静江と、混乱し泣き始める女たちも、別室へ移動した。


双子に、田島は俺を殺しに来たのかもしれないと不安そうに相談する連行先生の元へ、ケイ子と共に清川再登場。双子に打たれたマネをして大袈裟に床に転がったり、「お前たち施設に入った方がいいんじゃないかぁ!?なぁ!?!?」と酷い言葉を浴びせたり、相変わらず人を見下し馬鹿にしたような態度を取る清川。終いには、ケイ子に別れを告げ、「1年間お世話になりましたぁ」と言い残し立ち去ろうとする清川の背中に向け、「これは復讐なの?」と尋ねるケイ子。「日記を読んだのか!?」と慌てる清川だったが、「書いてることさえ知らない」と否定するケイ子。清川くん、口を滑らせてしまい気まずそうな表情。その慌てぶりを見たケイ子に「子どもね」と言われ、「俺はお前より10以上も上なんだぞ!もうすぐ誕生日なんだ!」と言い返す清川。え、10以上も上だったの、そして「もうすぐ誕生日」というタイムリーなワードに過剰に反応してしまった、自由くんもうすぐお誕生日だもんね…まだ誕生日まで10日もあるのに(観劇日は2/9)、そんなに楽しみにしてるんだ可愛すぎる…と思ったけど、このセリフはアドリブでもなんでもなく、ずっとデフォで言っているセリフだったらしい。まんまと騙された。そしてオタクの新手の炙り出し方に怯えた。

田島さんの方がずっと優しかったが、清川のことが好きだから今も挿絵を描き続けていられるとストレートに伝えるケイ子に対し、「君の絵は生温い」「大股開きにしろと言ったのになんで足を組んでいるんだ!」と怒る清川。そんな注文してるの…。「足を組ませるくらいがそそるのよ」とドヤ顔で言うケイ子と、同じようにドヤ顔で座り足を組む双子を凝視し、「…ほんとだぁ!」と素直に感動する清川。良かった、素直さは健在なんだ…。

付き合い始めた頃、田島の話ばかりする清川のことを同性愛者ではないかと疑った時期もあったが、私のことが大好きなのよね?と自信ありげに尋ねるケイ子に対し、「そういうのを希望的観測と言うんだ」と否定する清川。「希望的観測」は「自分に都合のいいような観測、こうだったらいいなあと思う事柄や内容」という意味らしい。なんだ、「円盤が出たらいいな」「この曲歌ってくれたらいいな」と、いつも私がやっていることか…と納得。「願望」や「希望」ではなく、「希望的観測」…賢そうな言い回しだしなんだかカッコ良いから今度から積極的に使っていこう…。

尚も自信満々なケイ子に「どうして分かるんだ」と尋ねると「日記を読んだから」とサラッと言ってのけるケイ子。やるなぁケイ子さん。途端わなわなと震え始め「読んだなぁ!?嘘つき!!」と顔をクシャクシャにして泣きそうな顔で地団駄を踏む清川の姿はまさに、癇癪を起こした子どもそのもの。可愛い、と思っていたらケイ子さんが「可愛い」と気持ちを代弁して下さった。ありがたや。地団駄はアドリブだったらしい、可愛い。


田島の部屋に「編集長〜〜〜!!!」と叫びながらケイ子を連れて駆け込む清川。あ、元の清川くんだ。

オベリスクのこと、挿絵を描いてるケイ子のこと、そして「付き合ってるんです僕たち!」と抱き合いながら元気に報告する清川。嬉しそう過ぎてこっちも笑顔になる。

さんざん田島の記憶を掻き回した後2人は去っていき、静江と2人きりになる田島は、しばらく静江の話に付き合うが、実は昨晩から記憶が戻っていたことを打ち明ける。もっと早く言ってあげてよ…。そしてひとつだけ頼みを聞いて欲しいと静江になにやら頼み込んだ。


田島はキヌ子に良くない印象を持ってしまっているから、弁解してきたら?と持ちかける静江の言う通りに、田島のもとへ向かうキヌ子。しかしこれは田島と静江が企んだ嘘だった。

「一肌脱いだの!」と満足気な表情の静江に、「田島の前で脱いだのか!?」と的はずれな勘違い発言をする連行先生、やはり面白い。


記憶が無い振りをする田島と話すキヌ子。相思相愛だったことが分かり、嬉しそうな2人だが、相変わらず絶えない小競り合い。仲良しだね。

もう1度告白して抱き締めたら色々思い出すかもしれない、と提案する田島は、不自然に身構えるキヌ子を優しく抱き締めると、「好きだった、生きててよかったぁ」と素直になり泣き始めるキヌ子を宥める。そしていざキスしようというタイミングで残りのメンバー全員が拍手をしながら現れる。タイミングよ…。

わちゃわちゃしている中「僕たち、結婚することにしました!」と選手宣誓のようなポーズで宣言する清川を軽やかにスルーし、静江が「お祝いしましょう!」と提案する。スルーされた清川くんの「え?」って顔が面白すぎて笑ってしまった。田島はキヌ子に「結婚しよう」とプロポーズし、「じゃあ合同で結婚式しましょう!」と提案する清川に、「お前らも結婚するの?」という周囲の反応。誰も聞いていなかった。青木さん健一さんカップルもノリで結婚することになり、3組の合同結婚式が開催されることに。そして、大櫛先生は外国人の夫と出席すると言い、一気にお祝いムードの会場。

まだプロポーズの返事をしていないと訴えるキヌ子は、「お断りします!」と告げるが、周りは笑顔で拍手喝采。「グッドバイ!グッドバイ!」と繰り返す素直になりきれないキヌ子にキスをする田島。囃し立てる周囲の声の中、清川が「よぉ〜し!お祝いだ〜〜〜!!!」と叫ぶと、音楽が始まった。


2人1組で歌い始め、清川は健一とペアで、飲み会の二次会のようなノリで、マイクを手に持つ振りをしながら「やっと見つけたし〜あわせを、本当にもとめ〜てるものは♪」と元気に歌い上げた。「ああめでたいな♪ああめでたいな♪」と両手をリズミカルに上げながら歌うみんな、客席からも手拍子が巻き起こり、全員がお祝いムード。

間奏では、ケイ子さんをお姫様抱っこしようとして失敗し、すってんころりんして笑い合う清川とケイ子の姿が見られた。すごく微笑ましかった、清川くん良かったねぇ…。全員が田島を通じ素敵な人と巡り会い、結ばれた、素敵なハッピーエンドだった。

 

 

KERA CROSSさんの舞台を観劇するのは初めてであり、太宰治原作の舞台ということもあり、堅苦しい雰囲気なのかと思いきや全くそんなことは無かった。シリアスなシーンでもユーモアに溢れ、どこかクスリと笑える一言や演出が施されており、3時間という公演時間はあっという間に過ぎていった。

 


清川という人物に焦点を当てると、真面目で他人想い、色恋沙汰には目もくれず、尊敬する人物や仕事に全力で情熱を捧げる従順さと素直さが眩しく、素敵だと思った。しかしあまりにも真っ直ぐすぎるその言動が、清川の敬愛する田島を追い詰め、清川自身まで追い詰めていってしまうという皮肉な展開に、胸が締め付けられた。

初登場時は本当に純粋で穢れを知らない青年というイメージだったが、闇取引の事実や、女にだらしがない点も知りながら黙認している清川の姿から、田島の汚いところを必死で見ないようにしながら、自分の信じた人は正しいんだという半ば自己中心的な考え方を持った青年、というイメージに変わっていった。清川自身の性格やオベリスクに対する忠誠心は本物だろうが、第1幕の清川の姿からは、闇取引や女遊びをせずとも僕はこんなに充実している、田島さんも目を覚まして一緒に仕事に打ち込んで素晴らしい雑誌を作りあげましょう、という田島に対する思いも込められているように思える。

しかしあの、田島が追い剥ぎに遭った夜、清川が目を瞑り見ないようにしていた田島の姿が次から次へと顕になり、怒りや失望、悲しみが、強い憎しみへと変わって言ってしまったのだなと思うと、なんともやり切れない気持ちになる。

第2幕で、低俗な雑誌に変わってしまったオベリスクに対しても「売れるから良い」と言ってのけた清川は、自分が信じた誇りを持ち頑なに純粋な文学誌として発行していたオベリスクすら信じられなくなり、自暴自棄になってしまっていた。しかし復讐のつもりで付き合い始めたケイ子のことも、だんだん本気で好きになっていく清川は、やはり根っこにある素直さや誠実さ、真面目さは健在していることが分かり、嬉しくなった。本当にチャーミングで憎めないキャラクターであり、なにより、そんな清川を演じのけた自由くんの熱量に感動した。生で見られたのが1度きりだったことが本当に悔やまれる。

 


本来なら関わることすら無いであろう様々な境遇の人物たちが田島を通して巡り会い、結ばれる様子は、見ていて常に高揚感を覚え、最後まで超スピードで駆け抜ける展開に目が離せなかった。1度きりしか観劇できなかったことが悔しいが、DVDが届く頃もう1度この感想を見返しながら、じっくりとそれぞれの人物に焦点を当て見ていきたいと思う。本当に楽しくてユーモアのある、素敵な舞台だった。

 

 

 

そして先日迎えた千秋楽。本当にお疲れ様でした。そしてすかさず希望的観測をツイート。



希望的観測が実現し、とても喜んでいます。そして昨日自由くんのブログが更新されました。


http://kiramune.jp/artist/irino/jiyucho/?p=2542


 


ありがとう、清川くんと、グッドバイ

次はボディガード!ストーカー!希望的観測をしながら、楽しみに待っています。